会社のホームページの多くは、WordPress(ワードプレス)という仕組みで動いています。世界中で使われている定番で、良くできた道具です。毎日ブログを更新するサイトや、こまめに情報を出すサイトには、いまでも良い選択だと思います。先に書いておくと、この記事はWordPressを否定する話ではありません。

ただ、もしあなたの会社のサイトが「更新するのは年に数回。でも毎月サーバー代と保守費を払っていて、ときどき『セキュリティ更新が必要です』と言われる」という状態なら、別の作り方があります。私たちは自分たちの会社のサイトを実際にその形へ作り替えたので、やってみて分かったことを書きます。

ホームページが「動いている」とはどういうことか

WordPressのサイトは、誰かがページを開くたびに、サーバーの中でプログラムが動いています。データベース(記事や画像をしまってある倉庫)から中身を取り出して、その場でページを組み立てて届ける。レストランにたとえると、注文が入るたびに厨房で調理して出すやり方です。

いつでも作りたてを出せるので、内容が頻繁に変わるサイトにはとても向いています。

動く部品が多いほど、手入れが必要になる

一方で、厨房を持つということは、厨房の手入れが要るということでもあります。

  • WordPress本体、プラグイン(追加機能の部品)、PHP(プログラムの土台)は、放っておくと古くなります
  • 古いまま放置すると、弱点を突かれてサイトを書き換えられる(改ざん)危険が増えます
  • だから定期的な更新作業=「保守」が必要で、そこに毎月の保守費がかかります

これは脅しではなく、動くものを動かし続けるための当たり前のメンテナンスです。車に車検があるのと同じで、悪いことではありません。問題は、そのサイトに厨房が本当に必要なのかという点だけです。

「動く部品をなくす」という作り方

年に数回しか内容が変わらないサイトなら、注文のたびに調理する必要はありません。あらかじめ全ページを完成品として作っておき、できあがったものをそのまま置いておく作り方があります(静的サイトと呼ばれます)。お弁当を作り置きして並べておくイメージです。

  • サーバーの中で動くプログラムがないので、更新し続けるべき部品がほぼありません
  • 書き換えの入口になる部分が大きく減るので、改ざんの心配も大きく減ります
  • ページを配る役は、Cloudflare(クラウドフレア。世界中にサーバーを持つネットワーク企業)の仕組みに任せられます。このクラスのサイトなら無料枠で収まります

実例: このサイト

いま読んでいただいているこのサイト自体が、その作り方です。

  • サーバー代: 0円
  • かかっているお金: ドメイン代(インターネット上の住所代)だけ
  • 私たちがやるセキュリティ更新の作業: ありません

移行は大変ではないのか

「作り替え」と聞くと大ごとに感じると思うので、実際に測った数字を書きます。私たちは検証用に用意したWordPressサイト(記事30本・固定ページ6枚・画像36枚)を、新しい仕組みへ移す実験をしました。

  • 移行ツールの実行そのものは、約2秒で36件(記事30本と固定ページ6枚)全部が移りました(エラー0件)
  • 初回は環境の準備に18分、取り込みに9分。手順が固まった2回目以降は、約1分
  • ただし落とし穴もありました。日本語のURL(インターネット上の住所)を持つ記事18本(記事全体の6割)が、そのままでは全部「ページが見つかりません」になる問題があり、そこは変換の道具を自作して18本すべて解決しています

「あっという間」の部分と「経験がないとつまずく」部分の両方がある、というのが正直なところです。

移行前と移行後を、実際に測って並べました

数字を並べるだけでは伝わりにくいので、移行前のサイトと移行後のサイトを、どちらも触れる形で公開しています。架空の会社のサイトで、記事も写真も同じもの。トップページには同じ写真2枚(工場の外観と内観)を載せています。

この検証では、移行後も管理画面から更新できる仕組みを移行先に選びました。ページを配る土台は、このサイトと同じCloudflareです。

2つのサイトを、同じ日・同じ環境で、Lighthouse(ライトハウス。Googleが提供している、ページの速さや使いやすさを採点する道具)のスマートフォン設定で計測しました。見てほしいのは主に2つ、LCP(エルシーピー。ページの主役になる部分が表示されるまでの時間)と、総転送量(ページを開くために端末が受け取るデータの量)です。

移行前 移行後
速さの総合点(Performance・100点満点) 58 98
主役が表示されるまで(LCP) 9.1秒 2.1秒
受け取るデータの量(総転送量) 1,432 KB 181 KB
取りに行くファイルの数(リクエスト数) 45 9
使いやすさの点数(Accessibility) 95 100

同じ写真を載せたうえでの数字です。「写真を減らしたから軽くなっただけ」ではなく、その写真2枚の分だけで比べても、819 KBから149 KBに減っています。トップの写真を、見る人の画面幅に合わせた大きさと形式で配るようにしたためです。

正直に書いておくと、全部が速くなったわけではありません。

  • 速くなったのは「ページが実際に見えるまで」の部分です。移行後のサイトも開くたびにサーバー側でページを組み立てる方式なので、最初の応答が返ってくるまでの時間だけを見ると、移行後のほうがわずかに遅くなっています
  • 写真の軽量化は、いまのところトップページの写真の話です。記事本文の中に貼った画像は、まだ元の大きさのまま配信されています
  • 記事と固定ページのURLは移行前のまま引き継げましたが、カテゴリ(記事の分類)ごとの一覧ページは、まだ移せていません

なお、この数字は2026年8月19日に、移行前と移行後を数分差で測ったものです。Lighthouseの点数は、サイトが1バイトも変わっていなくても、測る時刻によって数点は上下します。だから片方だけを測り直して差し替えることはしません。

向いているサイト、向いていないサイト

サイトのタイプ 判断
会社案内・店舗紹介(更新は年に数回) 静的化に向いています
毎日〜毎週更新するブログ・お知らせ WordPressのままが良いことが多いです
会員機能・予約・決済があるサイト 動く仕組みが必要なので、この作り方は向きません
更新する人が複数いて、管理画面が必要 移行先のCMS(管理画面つきの仕組み)を選べば両立できます

大事なのは「どちらが優れているか」ではなく、自分のサイトがどちらのタイプかです。厨房が要るサイトには厨房を。作り置きで足りるサイトは、厨房を手放すと、毎月の手入れとその心配がなくなります。